ナカの目のつけどころ

はじめに

火災時の避難について、二方向の避難経路を確保しなければならないという建築基準法があります。このためマンションなどの集合住宅には、バルコニーに避難はしごや救助袋が設置されることが多くあります。しかしこれらの避難器具は身体の不自由な人、子どもや高齢者などの「避難弱者」にとっては、安心して使えるものとは言いがたいのが現実です。

そもそも昭和40年代までの避難器具はいわゆる縄梯子が一般的でした。逃げるときには縄梯子を垂らして降りていきますが、体力のある大人でも難しい。そこで1974年(昭和49年)に当社が開発したのが伸縮はしご式の避難器具「タスカール」です。発売開始から40年以上経った今日でも改良を繰り返し、販売を続けています。

1974年に開発された「タスカール」

1974年に開発された「タスカール」

現在の「タスカール」(2019年時点)

現在の「タスカール」(2019年時点)

しかし、実際に避難はしごの蓋を開けてはしごを下ろして覗いてみると、床に50cm×50cm、深さ3mほどの穴があいているように見えます。この穴の中をはしごを使って降りていくことに、恐怖を感じる人がいるかもしれない。またケガをしている人や子どもや高齢者にとっても難しいかもしれない。

そこで、誰でもかんたんに安心して使える、そんな避難器具を目指して開発が始まりました。

開発の条件

まずは電力を使わないこと。災害時などは電力が止まる可能性が高いです。また、できるだけ色々な人が使用できること、高所からの避難時の恐怖感をなるべく少なくすることを目指しました。その結果出来上がったのが、降りる人の体重を利用してエレベーターの様に垂直に降りてくる「UDエスケープ」です。

操作はかんたん、①蓋をあける②手すりを引き上げロックさせる③足元のペダルを踏む、の3ステップです。操作開始の際、ステップの下が見えないようになっているので、視覚的な恐怖を与えないように配慮されています。また降下スピードも、なるべく体重に左右されずに安定したスピードを保つように工夫されています。乗ってみると、想像以上の安定感に驚くことでしょう。無事に下階に着き本体から降りると、乗っていた人の重みが無くなるので、また上の階に自動的に戻って次の人を迎えに行くという仕組みになっています。開発者は、ちょうどいいスピードを出すために、何度も試験を繰り返したそうです。(体重の軽い子どもは比較的ゆっくり、成人男性はそれよりも少し速いなど、体重によって多少の個人差はあります)

UDエスケープ

UDエスケープ

避難器具としては認められない?

社内では画期的な製品ができたと盛り上がる中、問題が発生しました。消防法で定められている避難器具の種類は、「避難ロープ」「すべり棒」「避難用タラップ」「避難はしご」「緩降機」「救助袋」「すべり台」「避難橋」です。つまり、垂直に降りてくる「UDエスケープ」の様な種類は存在しないということ。今まで世の中に無い製品を作ったので、いわゆる“避難器具”に該当しなくなってしまったのです。

避難するための製品を作ったのに、“避難器具”として認められない。そんな状況に陥ってしまいました。
そこで総務省消防庁の認定機関「日本消防検定協会」が認定する「特定機器評価」を2017年末に取得。これにより安全な避難ができる製品として認められたかと思いきや、道のりはまだ長かったのです。
特定機器評価とは、これまで防災器具として評価基準の無い機器に、認定機関がその基準と同等の技術水準があると認定するもの。認定を受けても、この器具を設置するためには、所轄の消防署に「基準の特例」での設置を相談する必要があり、その承認が無ければ設置はできない。「特定機器評価」の取得当時は、設計側・施設側の機器評価に対する認知度が高くなく、また消防署も全体的に慎重な状況でした。

徐々に認知されていく

こういった状況を打開するべく、まずは認知の拡大を目指し、建築・消防関連の展示会へ出展したり、実際に体験できるPR用デモ機を用意して全国各地をめぐり、その有効性を地道に説明していきました。

2018年には「ジャパン・レジリエンス・アワード2018優秀賞」(一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会)と「国土技術開発賞」(一般社団法人国土技術研究センター)を立て続けに受賞。
そして、大阪府大東市の消防署から提案があり、同市の保育施設に「UDエスケープ」の特例設置が決定したのです。さらにこの事例は「優良消防用設備等 消防庁長官表彰」を受け、全国の消防署にも認知が広がっていきました。

今の時代ならではのSNSなどではなく、直接会って説明し体験してもらう、そういった地道な取り組みの結果、全国各地さらには海外からも問い合わせが相次ぎ、東京都や北海道の高齢者施設、大阪の保育所等への設置も進んでいます。

消防庁長官賞

消防庁長官賞

車いすへの対応

社内では開発時から「いずれは車いす対応にしたい…」という意見がありました。そして、いざ「UDエスケープ」を発売したところ、お客様からも車いすに乗ったまま使用したいという声が寄せられるようになりました。こちらは2020年の発売を目標に、開発が進められています。

車いすへの対応

この「UDエスケープ」を実際に体験してみたい方は、お近くの事業所までご連絡ください。

UDエスケープのお問い合わせ先

営業企画部(東京工場内に設置) 048-932-0191
札幌支店(札幌工場内に設置) 011-662-7611
西日本営業推進部(滋賀工場内に設置) 06-6886-8961