ナカの目のつけどころ
降下型避難機器「UDエスケープWith」
導入インタビューVol.1
UDエスケープWith 導入インタビューVol.1
はじめに
東京都世田谷区にある重度障害者のためのグループホーム「グループホームめぐり」に採用されたUDエスケープWith。どのような経緯で導入されたのかを運営会社である社会福祉法人せたがや樫の木会の三浦氏に尋ねた。
お話を伺った方
グループホームめぐり運営会社 社会福祉法人せたがや樫の木会
三浦 氏
導入の経緯と苦労した点
- UDエスケープWith導入の経緯を教えてください。
重度の知的および身体障害者のグループホーム開設に向けて、東京都の事業指定担当者と協議を進める中で、以下の指摘をいただきました。
-
車いすごと避難できることで、その先の避難も可能となる
-
少人数の介護者でも避難誘導が可能となる
-
介護者が何度も建物内外を出入りしなくても、避難が可能となる
-
短時間での避難が可能となる
これらの課題をクリアできる設備であることから、採用させていただきました。またUDエスケープWithについては、施工業者から紹介がありました。
- 非常時の避難に関して、特に意識されていることはありますか?
特に車いす利用者にとって、車いすは「足」となるので、避難をする際であっても、利用者と一体のものとして考えています。安心安全かつ迅速な避難が求められますが、建物の外に出るだけでなく、一時避難場所に行くことが「安全な場所までの避難」であると考えています。

- これまで施設を運営されてきた中で、災害時の避難について不安に感じたことがあれば教えてください。
まだ入居者が入って1ヶ月(取材当時)しか経っていないので、災害を想定した訓練を行えていません。平時から訓練をすることで、不安となる課題を見つけ、それを解決していくことが求められると考えています。
- 計画段階から引き渡しまでの間、UDエスケープWith設置にあたって苦労されたことがありましたら教えてください。
車いすごと避難できる設備なので、設備および設備への導線の確保が求められました。東京都世田谷区での事業であり、限られたスペースでの生活となるので、日常生活を送るスペースをどれだけ非日常(災害時)に備えるスペースに費やすか、難しさがありました。
- 今回の設置にあたり補助金などを利用されましたか?どのような申請をされたか、差し支えなければ教えてください。
東京都障害者通所施設等整備補助金を活用しました。
東京都障害者通所施設等整備補助金とは
東京都障害者通所施設等整備補助金とは、東京都が独自に定める社会福祉施設等を対象にした補助金交付制度のこと。その他、厚生労働省が全国を対象にした社会福祉施設等施設設備費補助金など、地域ごとに活用できる制度がある。(令和5年度現在)
設置後の感想
- 設置後の感想と要望をお聞かせください。
建物の外に設置しているので、雨風による劣化が懸念されます。また稼働時に台が上昇し元に戻る際の衝撃と音について、軽減が図られると、より安心して利用できると感じました。
- 利用者の方に見ていただいた、反響などがあれば教えてください。
入居者の保護者に見ていただきました。特に車いす利用者のご家族からは画期的だとの感想をいただいています。一方で、高齢者施設や病院などで使用する車いすと異なり、身体障害者の使用する車いすは個人に合わせているため、通常サイズより大きいものとなっています。下降する部分が若干狭いとのご意見もいただきました。
あとがき
車いす利用者の安全を第一に考える運営事業者で、非常に感銘を受けた。また車いす利用者にとって車いすは身体の一部であり、車いすを持って行くことが出来ないすべり台での避難は、避難所までの移動が困難になるということが改めてわかった。今回、限られた敷地の中でバルコニーを設けてもらうなど事業者側の工夫があり、設置につながった。近隣には保育園もあり、上昇収納時の音の減少は今後の課題である。